手を貸していいの?”ブッシュの戦争”に

 憲法改悪阻止各界連絡会議と安保破棄中央実行委員会作成の シリーズ「有事法制」を考える3リーフの内容を利用させていただきました。  アメリカがおこなったイラク戦争は、あらためて戦争の恐ろしさを見せつけました。戦争は絶対にごめんです。ところが小泉内閣は”戦争に備える”と言って「有事法制(戦争法制)」を今国会でなんとしても成立させるとしています。憲法9条を持つ国で戦争に備えるとは、どういうことでしょうか?小泉首相が成立を急ぐ有事法制とは、いったいどんなものでしょうか?
          I N D E X

        STOP 有事法制
◆有事法案の最大の問題は、アメリカの戦争に協力すること
◆有事法案のふたつの柱
 *国民の強制動員と *自衛隊の武力行使


  イラク戦争が浮き彫りにした
     有事法案の危険

◆世界の平和秩序をむちゃくちゃにするアメリカの先制攻撃
◆どんな無法も支持/アメリカいいなりしかない日本政府

◆「イラク攻撃の次は北朝鮮」の危険性
◆修正しても中身は変わらない
◆国民の自由と権利奪う
◆「国民保護法制」のねらいは、国民の統制と動員

平和の21世紀に未来を開く運動のひろがり


 有事法制は、日本が攻められる事態に備えるものではなく、アメリカがイラクでおこなったような乱暴な戦争に、日本が参戦協力する法案です。アメリカの先制攻撃戦略と有事法制が結びついたとき、日本とアジアに何をもたらすでしょうか。
政府自身も、日本が攻められるとは想定していない

 だいたい、政府・与党自身、日本が攻められることは想定していないのです。
 ソ連が強大だったときでさえ、日本侵略の可能性を「万万万万が一」(福田首相・当時)としてきた政府。
 ソ連の崩壊で、山崎自民党幹事長も「日本が攻められるケースは非常に考えにくい」と認めるように、大規模な日本侵攻など考えられないというのが世界の常識です。
周辺事態法のふたつの「壁」


 日本の「周辺」でアメリカが戦争をはじめた場合、日本が後方支援するという新ガイドライン法(周辺事態法)が99年に成立しています。しかし、国民や地方自治体、民間業者に協力を強制できないこと、自衛隊が武力行使できないこと---このふたつの「壁」があります。これを取り払おうとするのが、有事法案です。
日本国憲法/
「武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」(第9条)
周辺事態法/
「武力による威嚇または武力の行使に当たるものであってはならない」(第2条)
有事法案/
「武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使、部隊等の展開その他の行動」(武力攻撃事態法第2条)をおこなう
有事3法案/
 
現在、小泉内閣が提案し、国会で審議されているのは、武力攻撃事態法案、安全保障会議設置法案の一部「改正」案、自衛隊法等「改正」案の有事3法案
国民を強制動員

 法案では、すべての国民が戦争に「協力するよう努める」(武力攻撃事態法案8条)と明記しています。地方公共団体(自治体)と「指定公共機関」に指定される民間企業(NHK、NTT、JR、東京電力、日本通運など)にも、「必要な措置を実施する責務を有する」(第5、6条)と戦争協力の責務が押し付けられます。
 自衛隊は戦争のために土地の使用や物資の収用を強制できるようになります。立入り検査を拒否すれば20万円以下の罰金、食糧など物資の保管命令に違反すれば6月以下の懲役または30万円以下の罰金などとなっています。
自衛隊が海外で武力行使

 有事法制は、自衛隊が「武力の行使」をすることを明記しています。重要なのは、日本が武力攻撃されていないにもかかわらず、「予測」や「おそれ」の段階で、有事法制が発動し、自衛隊が後方支援などさまざまの作戦を実施することです。国会答弁でも、周辺事態法によって海外で米軍を支援する自衛隊が攻撃されると、「日本が攻撃されたことになる」(福田官房長官)として、有事法制を発動し、自衛隊の武力行使に道が開かれるのです。

世界の平和秩序をむちゃくちゃにする
アメリカの先制攻撃


 アメリカは、世界の圧倒的な国や人々の反対にもかかわらず、イラク攻撃をしました。国連憲章をじゅうりんした無法な戦争です。アメリカはイラク攻撃を、例外としておこなったのではなく、先制攻撃を国の政策としています。しかし、国連憲章で武力行使が認められているのは、武力攻撃を受けて自衛権を発動する場合と、国連安保理が必要と決議した場合に限られています。先制攻撃は、世界の平和秩序をむちゃくちゃにするものとして、きびしく禁じられています。こんな無法で非人道的な戦争に協力するのが、有事法案です。
 有事法案は「予測」「おそれ」でも、自衛隊が出動し、国民に協力義務をおわせます。
 イラク戦争でも、アメリカはイラクが9.11のテロと関係があるとか、大量破壊兵器を持っているという「予測」で、半年も前から中東で基地建設など戦争の準備をし、民間機も使って兵員を輸送しました。まさに有事法案の考えとぴったりです。
ブッシュ戦略は国連憲章違反の先制攻撃戦略/
 「先制的行動することによってわれわれの自衛権を行使し、テロリストがわが国民とわが国にたいして危害を加えるのを阻止するために、もし必要なら単独て行動することもためらわない」(アメリカの国家安全保障戦略)2002年9月20日
どんな無法も支持
アメリカいいなりしかない日本政府


 イラク戦争は、日本政府がどんなに無法なものであれ、アメリカの戦争を支持するということを、ハッキリさせました。有事法制特別委員会の中心となっている自民党の久間章生元防衛庁長官は、イラク戦争に日本は反対できないとのべ、「日本は米国の何番目かの州みたいなものだから」と説明しています(「朝日」2月14日付)。
 たいへん恥ずかしい実態ですが、日本はアメリカのいうままに、従うというのが、自民・公明党の政府です。それだけに、有事法案が成立すれば、どんなに危険か、恐ろしくなります。
「イラク攻撃の次は北朝鮮」の危険性


 政府は、イラク戦争でアメリカの戦争を支持した理由のひとつとして、北朝鮮問題をあげます。この北朝鮮問題が、有事法案を急ぐ最大の理由にもされています。とんでもないことです。「独裁者は危険」「大量破壊兵器を隠しているのではないか」「攻撃される前に先制攻撃する」--イラクを攻撃した論理を北朝鮮にあてはめるとどうなるでしょうか。先制攻撃し、朝鮮半島を破滅させるたいへんな戦争に道を開きかねません。
 テポドンの発射など、北朝鮮には恐ろしい軍事国家のイメージがあります。一方、日本には100をこえる在日米軍基地があり、“殴り込み部隊”の海兵隊、空母機動部隊、強襲艦隊、攻撃機部隊も展開しています。日本海でも、大規模な日米共同演習がおこなわれ、日本は北朝鮮の動向をさぐる偵察衛星も打ち上げました。こうした動きを北朝鮮は「脅威」に感じています。
 こうして日本と北朝鮮がお互いに、軍事的緊張を高めることは、危険かつおろかなことです。拉致問題、植民地支配の清算の問題など、両国間の懸案を話し合いで解決し、国交正常化を実現することが、北東アジアの平和のために、なにより大切です。
 有事法案をつくることは、アメリカの危険な戦略をアジアでも発動できる体制をつくることです。北朝鮮やアジアの国ぐにに、日本は戦争をおこなう準備体制を確立すると宣言するようなものです。これは、アジアに軍事的緊張と戦争をもたらす危険な道です。


日本と北朝鮮の軍事費

 北朝鮮の「脅威」が宣伝されていますが、専門家の間では、まともな海軍力もない北朝鮮には、日本侵攻などできる軍事力がないというのは、常識になっています。軍事費を比べても日本は世界第3位の456億ドル。北朝鮮は21億ドルで、日本の20分の1(2002年版「世界軍事情勢」)。軍事力というなら、近代化されている日本の方が圧倒的に優勢です。
修正しても中身は変わらない

 与党は4月、有事法案について「修正案」を提案しました。その中心内容は、予測、おそれ、武力攻撃の3段階をまとめて「武力攻撃事態」としていたのを、「武力攻撃予測事態」と「武力攻撃事態(武力攻撃とその危険が切迫している事態)」のふたつに分けるというものです。「予測」と「おそれ」の違いがまったくあいまいで、国民から強い批判の声が高まったからです。しかし「修正」しても、鳩山邦夫有事特別委員長は「字句の修正があるが、中身はまったく同じ」と言っています。
国民の自由と権利も奪う

 有事法案は、「憲法の保障する国民の自由と権利」に「制限が加えられる」(第3条)ことを明記しています。土地建物・物資が強制的に使用・収用されるなど所有権・財産権が侵されるだけでなく、知る権利や思想・良心の自由も奪われます。政府は、集会・報道の自由も「公共の福祉に反しない限り」(福田官房長官)と制限することを認めています。
「国民保護法制」のねらいは
国民の統制と動員


 政府与党は国民保護法制の制定を急ぐとしています。国民保護法制というと、あたかも国民を「保護」するためのように宣伝できるからです。しかし、その内容は、政府の指示のもとに、地方自治体や、指定公共機関だけでなく、国民や、民間の防衛組織、ボランティアまで組み込む社会全体の「戦争協力システム」です。
 住民の避難、土地・建物の一時使用・収容、警戒区域の設定から、死者の埋葬の特例などがあげられ、従わない人には罰則がつきます。また、国民が協力中に死亡・負傷した場合の損害補償まで検討されています。
 この「協力システム」が動き出すと、現実に日本が武力攻撃を受けなくても「避難」や「収用」「警戒」などの訓練を、平時からおこなうことになります。これに協力しない人は“非国民”ということになるのでしょうか。国民保護法制は、まさに「戦争をする国」づくりの中心になる恐るべき法案です。



 イラク戦争に反対する運動が世界に広がりました。日本でも各界の著名人や団体、広範な文化人、労組、女性、学者、業者も次つぎに声をあげ、「デモははじめて」という若者や市民も多く立ち上がりました。世界各国では数十万、数百万の大集会も数多く開かれました。
 有事法案は、イラク戦争のような無法なアメリカの戦争に協力する法案です。国会で審議すればするほど批判の声が高まり、すでに2度の国会でも立ち往生しています。
 世界の歴史は、多くの血が流された2度の世界大戦をへて、「戦争の違法化」、紛争の平和的解決が本流です。これに挑戦するかのように、アメリカは世界の平和ルールに公然と敵対する先制攻撃戦略を採用し、イラク攻撃をしました。しかし、世界中の多くの政府と国民から批判され、国連では弧立しました。
 アメリカの横暴を批判する声が広がっています。日本が有事法制をつくリアメリカの無法な戦略の片棒をかつぐ戦争をする国になるのか、それとも憲法9条を持つ国らしく、有事法案をSTOPさせ、平和外交をすすめる国になるのか---日本の未来と世界の平和にも影響をあたえる、本当に大切な岐路に直面していると思います。
 有事法案を廃案に追い込み、平和を願う世界の人びとと手をとりあい、なんの罪もないこどもが殺されることのない平和な21世紀をつくりましょう。

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