2003.7.7 83号より



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8日から参院で審議開始
 憲法投げ捨て、戦闘地域に地上軍


◆国会の状況 イラク攻撃の「大義」とされた大量破壊兵器は見つからず、軍事占領の「長期 化=泥沼化」が予測され、「同盟国」さえ軍隊の現地派遣にほとんどそっぽを向く、など孤 立を深めるアメリカの要求に応えて、自衛隊のイラク派兵を急ぐ小泉内閣と与党は、アメリ カの独立記念日に合わせるかのように7月4日「イラク特措法案」 の衆院通過を強行しました。
  舞台は参院に移り、8日から「外交・防衛委員会」での審議が 始まります。衆院のように 「特措法特別委員会」を設置すれば 毎日でも審議できるのに、それを避けて週2日しか審議できない 「外交・防衛委員会」にしたのは、特別委員会を設けると順番で 委員長が共産党に当るからだと言われています。

*国会事前承認問題・・「イラクに自衛隊を派遣することの是非を国会に問うている。さらに 事前協議をかけるのは屋上屋を架すようなもの」(神崎公明代表)
*イラク攻撃の正当性・・前原誠司(民主)「大量破壊兵器が見つからなかったら大変だ。見 つからなくて攻撃に正当性があったといえるのか」(6.26)
*国会解散問題・・今秋解散でないと公明の嫌う来夏の衆参同日選になる可能性が大きくなります。一方、11月1日で期限切れを迎える「テロ対策特措法」の「改正案(期限延長)」の成立が今国会では無理。「テロ対策特措法改正案」の成立のため、秋の臨時国会の開催を早 めて審議入りしないと、国会解散の時期を失する。それには、自民党総裁選がからみます・・。

◆自衛隊のイラク派遣・占領支援業務の内容・マスコミの論 調と世論の動向

*「陸上自衛隊は首都バクダッドを拠点に、米軍などに給水(酷暑の中20万人を超える多国籍 軍への水の供給は1人1日3gというのが米軍ニーズ)・給油し、航空自衛隊は周辺国から イラク国内に兵員と物資を空輸する。・・イラク復興特別措置法案で、これまで政府が具体 的な説明を避けてきた自衛隊の派遣地域や活動内容が、国会審議などを通じて少しずつ見え てきた。イラク住民への復興支援より米軍支援を優先した内容」(「毎日」6.30)
*輸送機C130で周辺国に患者や水、食糧、援助物資を空輸。輸送艦おおすみ型など数隻がペ ルシャ湾で陸自部隊や車両を運搬。非戦闘地域に貯蔵タンクを積載した特殊車両で野営の補 給拠点を作り、燃料・水・食糧を提供。過去最大の計1000人程度を派遣、無反動砲、対戦車 、装甲車も携行。(日経)


*「イラク特措法 早期成立へ民主党は協力せよ」「自衛目的に武器の使用を限定した現行基準 を緩和するのは当然だ。」(「読売」7.1)

「朝日」の最近(6.28・29)の世論調査では、「アメリカのイラク攻撃を支持しない67%」 「小泉内閣のアメリカ支持に反対50%」、「自衛隊のイラク派遣賛成46%・反対43%」となっ ています。この法案の狙いと危険が国民に伝われば急速に反対世論が高まることは間違いありません。
*この間、「朝日」は数回、社説でイラク特措法案への批判を掲載しています。

「法案の大義そのものが揺らいでいる。・・自衛隊員の安全を確保しつつどうイラクの復興 を支援するか、---こんな正面からの議論よりも、首相の対米公約でもある自衛隊派遣を実現させるため、法的な枠組みをつくることが優先されているのが実態だ。」(6/23)

「石破防衛庁長官らは、法案審議が本格化してからも『自衛隊にどういうニーズがあるのか、 現時点では確定的にいえない』『イラク国内のどの地域でどんな団体が戦闘行為をしている のか、特定できる調査が行なわれていない』といった答弁しかできていない。余りにずさんで説得力がない」(7.2)、

「ずさんでいいかげん。これでは派遣される自衛隊員がかわいそうだ。」「首相は、『日本 だけ何もしないわけにいかない』『武力行使のために行くのではない』など得意のせりふを 繰り返す。心は一日も早く法案を成立させ、自衛隊を現地に送りたい、ブッシュ大統領に見 せたい、との思いでいっぱいのようだ。それが小泉流の文民統制ということだろうか。」  「まさか民主党は、バナナの叩き売りのような話に乗ることはないと思うが・・」(6.26)

「おそらく多くの人にとって、今回のイラク派遣は、カンボジアなどで実績を重ねてきた国連 平和維持活動(PKO)の延長線上でイメージされているのだろう。だが、イラクでの活動 とPKOはまったく違う。米政府は戦争の終結を宣言していない。復興や人道支援を取り仕 切る国連機関もない。米軍の期待は治安活動への支援、つまり戦争の後始末への協力だ。」(7.2)

「戦後復興というが、今は本当に『戦後』なのか。ブッシュ大統領が5月に作戦終了を宣言 してから、米兵が約50人死んでいる。私はまだ戦争は終わっていないと思う」(サミュエル ズ・マサチューセッツ工科大学教授)・・『同盟維持』の打算から十分議論をもせず、米国 の動きを追認してきたからだ」(6.25)
過去の自衛隊の海外派兵 (「日経」6.22より)

 時期    活動地域    部隊 活動内容      携行武器
1991年4月 ペルシャ湾     海 機雷除去       なし
92年9月  カンボジア     陸 停戦・選挙監視    拳銃、小銃
93年5月  モザンビーク    陸 生活物資輸送     拳銃、小銃
94年9月  ザイール(現コンゴ) 陸 ルワンダ難民支援   拳銃、小銃、機関銃
96年2月  ゴラン高原(継続中) 陸 兵力引き離しの監視  拳銃、小銃、機関銃
99年11月  西ティモール    空 東ティモール難民支援 拳銃
2001年10月 パキスタン     空 アフガニスタン難民支援 拳銃
01年11月  インド洋(継続中)  海 米英艦船などに燃料捕給 なし
02年3月  東ティモール(継続中)陸 インフラ整備     拳銃、小銃、機関銃
03年3月  ヨルダン      空 イラク難民支援    拳銃